フィジカルインターネットとは~日本と海外の動向をわかりやすく解説~
企業が保有する倉庫やトラックをシェアすることで、効率の良い物資輸送を目指す、新しい物流システムの考え方である「フィジカルインターネット」。ECの普及に伴い、慢性的な人手不足や運送車によるCO2の増加といった多くの課題を抱えている物流業界において、大きな注目を集めています。
本コラムでは、「フィジカルインターネット」ついて、基本情報から日本と海外の動向などを、メリットと課題に触れながら解説いたします。
目 次
1. フィジカルインターネットとは
●フィジカルインターネットの概要
フィジカルインターネットは、インターネットの考え方を物流に応用した次世代の物流システムです。インターネットでは、デジタル情報がサーバーをリレーしながら送られますが、フィジカルインターネットでは「もの」がトラックや貨物列車、船、航空機などを使って物流センターをリレーしながら運ばれます。
このシステムは2010年頃にヨーロッパで提唱されて以来、国際的に研究が進められています。デジタル技術を活用して物資や車両の空き情報を確認し、貨物を様々な企業が共有する物流リソースで効率的に輸送します。これにより、生産性向上やコスト削減、物流品質の向上、さらには地球環境への貢献が期待されています。
●フィジカルインターネットが注目されている背景
1. 宅配の増加
近年、インターネット通販の急速な普及により、宅配便の需要が増加しています。特にコロナ禍以降、外出を控える傾向が強まったことで、オンラインショッピングの利用が一層拡大しました。これに伴い、物流業界は配送量の増加に対応するため、効率化とコスト削減の対策が急務となっています。
2. 宅配ドライバー不足
フィジカルインターネットが注目される背景の一つに、物流業界で深刻化するドライバー不足があります。宅配便が増えることでドライバーへの負担が増えることから、人材の物流業界離れが懸念されています。さらに、日本では高齢化が進んでいることもドライバー不足の一因とされており、この傾向は今後もますます加速する見込みとなっています。
3. 環境問題
物流業界は、トラックや船舶、航空機などの輸送手段から大量のCO2を排出しており、地球温暖化の一因となっています。特に、物流業界における貨物自動車のCO2排出量削減は、長年にわたり重要な課題として取り組まれてきました。今後も環境への配慮がますます強く求められることは確実です。
2. フィジカルインターネット・日本と海外の動向
続いて、 フィジカルインターネットへの日本と海外の動向として、政府の取り組みなどを紹介します。
●フィジカルインターネット実現会議
オンラインショッピングの増加や人口減少による労働力不足の深刻化が進行する中で、物流の需要と供給のバランスが崩れつつあります。このままでは2030年には物流機能そのものの維持が難しくなる可能性があるということが懸念されています。
このような事態を避けるため、2040年を目標とした物流の未来像「フィジカルインターネット」の実現を目指すことを目的に、2021年10月にフィジカルインターネット実現会議が設立されました。
●フィジカルインターネット・ロードマップ
フィジカルインターネットの実現に向けたロードマップでは、業界全体で取り組むべき課題を「ガバナンス」、「物流・商流データプラットフォーム」、「水平連携」、「垂直統合」、「物流拠点」、「輸送機器」の6つの主要な項目に整理しており、各項目において具体的な取り組みが提案されています。
また、企業経営者のサプライチェーンマネジメントやロジスティクスに対する意識改革も重要な要素です。これらの取り組みは、2040年までに段階的に実施される予定です。
●フィジカルインターネットセンターの設立
フィジカルインターネットセンター(JPIC)は、食品や日用雑貨などの消費財から、材料や部品などの生産財の物流を同じ「もの」の移動として捉えています。物流情報、物流センター、トラックや鉄道などの輸送手段、そしてそこで働く人材の協働活用を目指し、迅速かつ正確で安定した物流システムの構築に関する普及・啓蒙活動や調査研究を通じて、国民の豊かで安心な生活に貢献しています。
●海外の状況
ヨーロッパでは2013年に、ロジスティクス分野における研究開発やイノベーション政策の意思決定を支援するために、約130の企業・研究機関等が参加してALICE(欧州物流革新協力連盟)が設立されました。ALICEはフィジカルインターネットを研究していて、2050年のゼロエミッション(廃棄物の再利用などを通して、廃棄物を限りなくゼロにしようとする取り組み)を目指し、2030年にフィジカルインターネットの実現を目標にしています。
3. フィジカルインターネットの実現した際のメリット
次にフィジカルインターネットのメリットを見ていきます。
●物流リソースの稼働率向上
従来の配送方法では、自社が請け負った荷物の量に関係なく配送を行うため、トラックの荷台スペースに空きが生じることが多々ありました。しかし、フィジカルインターネットでは複数の企業の荷物をまとめて積載することが可能です。
さらに、配送ルートが固定化されることで納品時間が安定し、配送効率も向上します。複数の物流会社がPIノードを通じて荷物を集約することで、現行システムよりも効率的な物流ネットワークが構築され、無駄が削減されます。
●コストの削減
トラックの稼働台数を抑えることで、燃料費や人件費の削減が可能です。稼働台数が減少すれば、所有する車両台数そのものを減らすことができ、保有コストも大幅に削減できます。このようにして浮いたコストは、顧客への新しいサービス提供に利用できるため、顧客満足度の向上にも寄与します。
●ドライバー不足の緩和
フィジカルインターネットが実現すると、一度に多くの荷物を配送できるため、ドライバーの業務負担が大幅に軽減されます。これにより、稼働するトラックの台数を減らすことができ、少ない人数でも効率的な運用が可能になります。
また、従来の物流システムでは、ドライバーは長時間労働に苦しむことが多く、離職率の増加が問題となっていました。しかし、フィジカルインターネットの導入により、ドライバーの労働環境が大きく改善され、離職率の低下が期待されます。
4. フィジカルインターネットの実現へ向けて取り組むべき課題
最後に、様々な物流問題の解決が期待される、フィジカルインターネットの実現へ向けて、取り組むべき課題を見ていきます。
●荷物サイズの標準化
現状では、パレットやコンテナ容器などの物流資材が企業ごとに異なり、これが物流の効率を阻害しています。例えば、異なる規格のパレットを使用している企業同士では、資材の共有が困難となり、結果として物流コストの増大や効率の低下を招きます。フィジカルインターネットを実現するためには、荷物サイズや物流資材の標準化が不可欠です。
●物流システムの共有化
物流リソースを効果的に活用するには、どのトラックや倉庫が空いているのかをリアルタイムで確認できるプラットフォームの開発が求められます。企業間で物流リソースを共有し、統一されたシステム上で情報を交換することで、効率的な物流運営が可能となります。これにより、無駄な空車や空き倉庫の発生を防ぎ、全体の物流効率を大幅に向上させることができます。
●物流工程・システムの見直し
フィジカルインターネットの実現に向けて、物流工程とシステムの見直しは避けて通れない課題です。物流業界では、効率化と省人化が求められており、これらを実現するためには新しい技術やシステムの導入が不可欠です。例えば、パッケージング作業の効率化はその一つの重要な要素です。
5. まとめ
本コラムでは、次世代の物流システムであるフィジカルインターネットについて詳しく解説しました。
フィジカルインターネットによる「物流リソースの向上」や「ドライバー不足の緩和」は、業務効率だけでなく業績を向上させることが期待できますので、今回ご紹介した情報を参考に、物流工程の見直しなどを検討してみてはいかがでしょうか。
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